経営学の歴史

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90年代経営学の動き 研究者名にマウスを載せると説明ウィンドウが開きます

Update
1997 イノベーターのジレンマの登場
ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授が顧客の声(既存の技術に固執したがる)に耳を傾けるが故に市場を制した企業が衰退していくという説を発表しました。

ここでは経営学の歴史を現在からさかのぼる順で解説しています。また,すべての経営理論を網羅することは不可能であるため,歴史的に見て重要な意義を持つと思われる経営論のみを記載してあります。

経営学の歴史は一般的に,テイラーの科学的管理法に始まり,ホーソン工場での実験,X−Y理論を経てボストンコンサルティンググループやマッキンゼーコンサルティングの一連の提言の順で語られます。これらについては野中郁次郎教授の「経営管理」(日経文庫)に詳しく語られていますのでそちらを参照ください。このページでは,これらの理論について要旨を簡略にまとめるにとどめさせていただきます。

1996 "What is Strategy" Michael E. Porter 戻る
Harvard Business Review 1996 November-December

リエンジニアリング革命,コアコンピタンス経営などの台頭で混迷する経営戦略論に,経営戦略論の大家ポーター自身が反撃を試み,原点復帰を説いた論文が1996年の暮れに発表されました。

この論文は,

  1. 日本式経営の限界 (Operational effectiveness is NOT strategy)
  2. 競争優位コンセプトの再認識 (Strategy rests on Unique Activities)
  3. 選択こそ永続する競争優位の根源 (Trade-offs create the need for choice and purposefully limit what a company offers)
  4. 企業活動の一貫性が永続する競争優位を強化する (Fit drives both Competitive advantage and sustainability)
  5. 戦略は10年以上のスパンで考える (Strategic positions should have a horizon of a decade or more)

の5点を主張しています。

論文の巻頭で,日本企業の成功は一過性のもので,すでに競争優位を失い,合理性を欠く日本式の経営が内部的な矛盾の噴出に困惑していることを指摘しています。日本人の視点からするとまだまだ西洋文化と東洋文化の違いを理解し切れていない点を感じますが,表面的には日本企業が直面している問題を指摘しているといえます。ポーターが指摘する日本企業の問題は,外部的にはアメリカ企業等が生産性の点で日本企業に追いついてきたという脅威,内部的には極端な合意重視主義による意志決定の遅さと横並び主義にる独自性の欠如です。生産性での優位を失えば,日本企業にはアメリカ式合理的経営に対して,全く競争優位が存在しなくなるというのがポーターの論調です。

続いて,「競争優位の戦略」で提示したコスト優位,差別化,戦力集中の3つの基本戦略をさらにシンプルにした,ユニークネスによる競争優位の獲得と,勇気ある決断/選択が戦略の要であること,さらに,同じく「競争優位の戦略で提示した価値連鎖モデルを発展させたと思われる企業活動の一貫性の重要性を指摘しています。最後に長期的な視野の重要性を説いているところは,日本式経営からの影響ではないかと思われます。

長期的な視野と日本式の合意重視主義,横並び主義の関連性には全くふれられておらず,日本式経営のいいとこどりの気配を感じます。日本式経営が長期的視野に立った経営を行ううことができた文化的背景(生涯雇用,合意重視主義,横並び主義など)をもたないアメリカ式合理主義の経営がどうやって長期的視野を取り入れていくのか興味がもたれるところです。 

1996 "Strategy as Revolution"
Gary Hamel
Harvard Business Review 1996 July-August

ハメルは一連の論文に続いて,ストラテジーの本質についての論文を発表しました論文でハメルはストラテジーがストラテジーたり得るための10個の指針を提示しています。

  1. 経営計画は戦略ではない
  2. 戦略立案は現状をひっくり返すものでなくてはならない
  3. 戦略立案のボトルネックは経営トップである
  4. どんな企業にも革命的発想は潜んでいる
  5. 変化自体でなく,変化を経験することが大変なのである。
  6. 戦略立案は民主的でなくてはならない
  7. 社内の誰もが革命家になれる
  8. 革命家には特別な知性は必要ない
  9. トップダウンとボトムアップは両立できる
  10. 結果はやってみなくてはわからない

計画を立てる発想では戦略は立案できないという指摘や,経営者こそが改革を妨げる元凶であるとする指摘は一聴に値すると思われます。

1994 "Competing for The Future"
Gary Hamel, C. K. Prahalad

Harvard Business Review 1994 July-August 戻る

リエンジニアリングの大ブームと急速な収束のあと,コアコンピタンス経営のコンセプトを持つハメルとプラハラードが未来に向けた経営について提言する論文を発表しました。

論文の中で,彼らは,日本企業のマネージャーは,日本式経営にこだわっていないこと,かれらは日本式経営の限界を認識しており,それを越えた経営に挑戦しようとしていることを指摘し,日本式経営の強さはこうした挑戦する精神にあると説いています。

彼らの論は,経営者は,現在の効率化(リエンジニアリング)ではなく将来の姿を作り出すことに努力しなければならないとしています。1990年に発表されたコアコンピタンスコンセプトの延長線上ある考え方といえます。

1992 Competing on Capabilities
George Stalk, Phillip Evans,Lawrence E. Shulman
Harvard Business Review 1992 March-April 戻る

ストークらは,90年代の競争は80年代にいわれたようなTime−Basedな競争尺度だけでなく,

  1. Speed to respond market demands (スピード)
  2. Consistency with customers' expectation (一貫性)
  3. Acuity in competitive targeting (正確さ)
  4. Agility in business (機敏さ)
  5. Innovativeness of ideas (革新性)

といった広範な競争尺度を取り入れるべきだとしています。

これらの競争尺度を満たすための基本概念がCapabilitiesだとしています。Capabilitiesの例として本田技研のエンジンとパワートレインの技術,ウォルマートの在庫補充のシステムなどをあげています。

Capabilitiesは,まず地理的に新たなマーケットへの進出を可能にし,さらにCapabilitiesを応用した新たな製品分野への進出も可能にするとしています。Capabilitiesは,Capabilitiesに集中することで市場と製品を拡大させることができるものだとしています。これは,アメリカ大手企業の多くが,ポートフォリオコンセプト(ボストンコンンサルティングが提唱した市場の成長性と収益性によるマトリクスなどにもとずく合理的資金運用をめざした経営コンセプト)による多角化に失敗し,企業ドメインへの集中の優位性が説かれたことをうけ,企業ドメインへの集中と新規事業への進出を両立を試みたコンセプトであるといえます。

さらに,新規事業の進出に際しての新たなCapabilitiesの必要も説かれています。新たなCapabilitiesの例として本田技研がアメリカに進出したさいに販売店管理のCapabilitiesを獲得しており,これなくしては本田のアメリカでの成功はなかったとしています。

Capabilitiesの実現過程のモデルとして,

  1. 戦略を意欲をかき立てる目標値に具体化すること
  2. 従業員がCapabilities実現のために必要な技術や経営資源を十分に経営サイドが準備すること
  3. Capabilities獲得に向けての一歩一歩の前進をを社内に明示すること
  4. 経営トップがリーダーシップをとり続けること

の4点を提示しています。

論文の中で,コアコンピタンスとCapabilitiesの違いが言及されており,Capabilitiesはコアコンピタンスよりも広範な競争優位の根源を対象にしていると述べています。

1990 The Leader's New Work:
Building Learning Organizations
Peter M. Senge
Sloan Management Review 1990 Fall 戻る

センゲは,90年代の競争力のある企業像としてラーニングオーガニゼーションを提唱した。センゲはこの論文の中で,ラーニングオーガニゼーション構築のためのリーダーの役割の重要性とリーダーに求められる役割及びスキルを提示している。

ラーニングオーガニゼーションにおけるリーダーの役割は,ビジョンを提示と現状を把握,さらにビジョンと現状のギャップをクリエイティブテンションとして描いてみせることに始まるとしています。

さらに、クリエイティブテンションを描くために,リーダーは

  1. 組織の新たなメンタルモデルのデザイナーであるべきこと
  2. 組織の現状のメンタルモデルを構成員に理解させる教師であるべきこと
  3. 組織構成員が帰属感を感じるようにしむける,組織の目的に使える召使いであるべきこと

と説いています。

さらに、これらのリーダー像を実現するためのスキルとして

  1. 組織内にビジョンを共有させることができること
  2. 組織のメンタルモデルを意識の上に載せることができること
  3. システムズシンキングができること
  4. オーガニゼーションラーニングの基本である個人のモチベーションを高めることができること
  5. チームワークを醸成できること

の5つをあげています。

彼以前にも繰り返し述べられてきたヴィジョンの大切さ,人間管理の大切さ,合理的思考技術の大切さ,チームワークの大切さを統合し,1つの理論体系に打ち立てようとしたのがセンゲの試みといえます。

1990 Reengineering Work: Don't automate, Obliterate
Michael Hammer

Harvard Business Review 1990 July-August 戻る

ハマーは,80年代後半にアメリカで行われたレイオフを中心としたリストラクチャリングでは新たな競争優位が獲得できないとして,コンピューターネットワークを活用した90年代の新業務プロセスの構築を提唱した。

既存の業務プロセスは細分化を基本とする古い時代の設計思想のもとに構築されており,コンピューター術の発達は細分化の必要性をなくし,より統合的な業務プロセスが可能になったとしています。

1990 The Core Competence of the Corportion
C.K. Prahalad Gary Hamel
Harvard Business Review 1990 May-June 戻る

ハメルとプラハラードは,「80年代の経営者はいかに会社をスリムかするかで評価されたが,90年代の経営者はいかに企業を成長させるかで評価されるであろう」と述べてます。そして,企業を成長させる要因をコアコンピタンスとよんでいます。

彼らは,いくつかのコアコンピタンスを組み合わせることで,企業はコアプロダクトを生成できるとしている。コアプロダクトとは抽象的な概念で,実際のプロダクトとは異なります。さらに,コアプロダクトがビジネスを生成し,ビジネスごとに実際のプロダクトが生成されると論じています。

彼らは,コアコンピタンスは,普通の資産とは異なり,使っても消耗せず,またいくらでも共有できるとしています。

コアコンピタンスは,従来の戦略的ビジネスユニットの考え方が経営資源を分散させてしまったことへのアンチテーゼであるとしています。

さらに,彼らは,コアコンピタンスを実際のプロダクトに発現させていくためには,製品ごとに異なる業績特性に配慮できる業績構造を構築する必要があるとしています。加えて,コアコンピタンス構築の鍵になるミドルマネージャークラスが戦略的ビジネスユニット横断的に議論できるようにすることが望ましいとしています。コアコンピタンスの構築に当たってはすべての戦略的ビジネスユニットが同時に平等な利益を得ることは難しいとしています。トップマネジメントがこうした偏りに配慮しなくてはコアコンピタンス経営は成り立たないと論じています。

Japanese Management 戻る

80年代における日本企業の世界市場での躍進を契機に,日本企業に関する研究が盛んに行われた。MIT の Sloan School が中心に行った日本製造業の研究ではジャストインタイム型の日本式生産管理をリーン生産方式と名付け生産性の高さを証明しました。

日本式経営方式としては,

  1. 顧客満足まで一つのシステムとしてとらえる日本式高度品質管理システムをさすTotal Quality Management
  2. 生産管理方式としてのジャストインタム
  3. サプライチェーンマネジメントのコンセプトとしてとらえられるデザインイン
  4. 従業員の高い企業貢献意欲を創造する生涯雇用

などが研究されています。

研究の過程でKaizenのような日本語が英語化され国際的に用いられる経営コンセプトとなりました。

古典理論 戻る

Porter 戻る

マイケルポーターが80年代前半に提示した経営戦略論は,古典であるとともに90年代においても主流であり,他の経営戦略論の追随を許さない論理的透徹性と実践的有効性を保ち続けています。

Five Force Model

経営戦略立案の前提となる業界構造の分析を行うモデルで,サプライヤーの影響力,買い手の影響力,新規参入競合企業の脅威,潜在的代替製品製造企業の脅威,競合他社との競争の激しさ,の5つの力が業界構造を把握する上でのキーファクターであるとしています。

Generic Strategy Matrix

経営戦略は,コスト優位を形成するか,差別化を確保するか,またそれぞれにおいて戦力を集中するか,規模の経済力を活用するかのマトリクス上で決定されるとするシンプルな経営戦略策定方針決定のためのモデル。

ひとたび経営戦略の方針を決定した後は,すべての戦略が一貫性を持って構築されなくてはならないとしています。

Value Chain Model

企業活動を経営機能(調達,製造,物流,販売,人事,財務など)が人つながりになって最終的に顧客に価値を提供するものであると定義するモデル。

各経営機能に競合他社との優劣を記載することで,業界内における各経営機能の競争力を一覧することができ,企業の競争力を評価するのに有益なモデルです。

Strategic Scenario Analysis

戦略実現過程に想定される選択肢を独立要因と独立要因の従属要因とに分類し,独立要因を組み合わせることですべての戦略シナリオを想定できるとする考え方。独立要因だけに絞っても変数が膨大ですべてのシナリオを想定しきることが困難であるため,他の戦略立案コンセプトに比べると利用度が低くなっています。戻る

SIS 戻る

企業の競争優位はいかに情報技術を活用するかによって決まるとする経営理論。1990年頃,チャールズワイズマンが提唱し,コンピューター技術の進歩とともに注目を集めました。

Excellent Company Model 戻る

企業の競争優位は,従業員の会社への貢献意欲によって決まるとする経営理論。ポートフォリオマネジメントなどコンサルティングファームが提示してきた合理性にフォーカスした経営コンセプトが賛否両論を巻きを越している中,豊富な事例と説得力のある文体で,人間中心主義の経営コンセプトを復活させました。

戦略と組織 戻る

合理的戦略遂行の立場からチャンドラーが述べた「戦略が組織を規定する」という提言と,組織自体が独自の価値創造の特性をもっているという立場からアンゾフが述べた「組織が戦略を規定する」という提言は,戦略と組織を考える上での2大提言である。

PIMS Model 戻る

ボストンコンサルティンググループは,優良企業の競争要因に関する大規模の調査の結果をもとに,優良企業は品質において他企業を凌駕しているという傾向を発見し,そのほかの傾向を含めて優良企業の経営戦略として提言をまとめた。

Leaning Curve Model 戻る

ボストンコンサルティンググループによって提唱された,競争優位獲得戦略の古典です。第二次大戦直後爆発的に成長するアメリカ企業の成長要因を分析し,累積生産量の増加とともにコストが低下し,競争力高まっていく現象を説明したものです。規模の経済学とともに大規模製造業経営の基本原理として活用されています。

Motivation Theory 戻る

ホーソン工場の実験

1924から断続的に行われたエルトン・メイヨー氏と レスリスバーガー氏のホーソン工場における実験で, 労働者の生産性は,合理的作業環境だけでなく, 使命感や職場の人間関係などに大きく影響されることが知られるようになりました。 これにつづいてマグレガー氏が有名なX−Y理論を提唱しました。

X−Y理論

マグレガー氏は,従来支配的であった「人間は本来働くことが嫌いで, 強制され,監視されなければ,仕事を怠けてしまう」 という考え方(X理論)に対して,「人間は,期待され自ら 目標を設定したときにもっとも高い能力を発揮することができる」 とするY理論を提唱した。

マズローの欲求5段階説

マズロー氏は,人間の欲求は下位の生理的欲求,安全欲求からより 上位の社会的(帰属)欲求,尊厳の欲求,自己実現の欲求へ と下位の欲求が満たされるごとに上位の欲求へむけて基本的モチベーションが高まっていく という説を提唱した。我々が日常,目にする社会的環境とそこにおける人間の行動原理 と大変よく適合しており,以降現在に至るまで広く認知されている仮説です。

Tailor System

20世紀初頭に名声を獲得したフレデリック・テーラー氏が創設した科学的管理法 にもとづく経営をテーラーシステムと称します。工場労働者の作業研究や時間研究を 行い優秀な労働者には高い給料を払うという差別賃金制度を導入しました。 また,作業研究や時間研究をとうして資材と時間の浪費をさけ最高能率を達成することが 工場間理の目的とされ,作業研究等を行う企画部や,職能的職長制度,指導票などの制度 の導入を提唱しました。