コンセプト

考える仕事0

 考える仕事はあくまで人間がやる仕事でコンピューターはあくまで人間が考えるのをサポートするだけです。以前の情報システムの開発の原則として、「定常業務はシステム化し例外業務はシステム化しない」というものがありました。これは、例外業務までシステム化していては切りがないという発想から来ています。しかし、我々は、日々、例外業務に追われています。例外が起こったときにどうするかを考えて決めるのは人間です。情報システムは人間が行う例外業務をフレキシブルにサポートするよう設計されるべきです。

サプライチェーンとロジスティクス

 日本のロジスティクス研究の権威の1人であります阿保栄司先生は、ロジスティクスの発展段階のなかにサプライチェーンを位置づけています。先生の発展段階は以下のようになっています。

第0段階 物流以前

輸送、保管、包装、荷役、流通加工、物流情報がバラバラな段階

第1段階 物流

個別要素が組織化して物流システムとなった段階

第2段階 ビジネス・ロジスティクス

製品物流、生産管理、原材料調達という3つのサブシステムがカップリングされた段階

第3段階 サプライチェーン・ロジスティクス

企業間パートナーシップが形成された段階

第4段階 グリーン・ロジスティクス

廃棄物処理やリサイクルまで含めた段階

大変明快な、整理だと考えます。

サプライチェーンのマクロ構造設計

 ここでは、安全在庫算定式を基にしたサプライチェーンの構造設計についてご紹介いたします。小売り、卸、メーカー、サプライヤーを区別せず、多段階に在庫ポイントが連なる物流構造をサプライチェーンと仮定します。

 このとき、マクロにどこに在庫を持つかでサプライチェーンのマクロ構造が決まります。

 まず、前提として、絶対的にリードタイムが長いほど在庫水準が高くなると仮定します。

 与えられたリードタイム構造の中で、在庫を下流側に持てば、市場即応性がよくなり、上流側に持てば在庫量の削減につながります。

 この在庫ポイントを上流側に移動させることによる在庫削減は、需要が正規分布していると仮定した場合、「正規分布のn平方根ルール」によって証明可能です。

 在庫とは、供給能力では即応仕切れない需要に対してあらかじめ多めに供給しておいて対応するために生じるものです。

 どのくらい多めに供給しておけば大丈夫なのかを算定するのが安全在庫式です。この式は、需要の変動は正規分布しているという仮定を前提にしています。


 α:安全在庫係数
 
σ:需要の変動の標準偏差
 λ:補充リードタイム/需要リードタイム

 安全在庫式でαは、例えば品切れ率5%以下を達成するためには1.645にするというように、正規分布をもとに係数がすでに算定されています。σは過去の需要変動から算出した変動の標準偏差です。もう一つのλが「正規分布のn平方根ルール」が適用される項です。「正規分布のn平方根ルール」というのは、ある期間の実績をもとにある期間より長い期間を予測する際、予測する期間の需要の振れ巾は、予測する期間が実績期間の何倍(n倍)の時、実績期間の需要の振れ巾のn平方根倍になるというルールです。

 具体的には実績期間が予測期間と同じならば1倍、2倍の期間を予測するなら、1.41(2の平方根)倍になるということです。

 安全在庫式では、実績期間は補充リードタイム(補充サイクル)、予測期間は需要リードタイム(需要サイクル)に当たります。言い換えれば、1回の供給に当たって何回分の需要を満たすようにまとめて補充するのかがnに相当します。

 サプライチェーンのマクロ構造で考えると、需要リードタイムと補充リードタイムが1対1のところに在庫ポイント設定すれば、n平方根=1となり、αxσ分だけの安全在庫でよいことになります。1対1の在庫ポイントは、補充するのに2日かかり、お客様へお届けするのも2日余裕があるという場合です。

 現実的には、1対1の在庫ポイントよりも下流側に在庫ポイントを置き、即納体制を目指すことになります。補充に3日かかるが、お客様には1日で届けたい場合、n=3となり、安全在庫量は正規分布から直接算出される安全分に1.73を掛けた量になります。

さらに、上流へさかのぼれば、補充リードタイムの方が短くなりαxσ分より少ない安全在庫でよいことになります。しかし、この場合、補充は毎日できるが、お客さんには3日待ってもらうというような構造となり、現実的とは思えません。

 この需要への即応性と、安全在庫量をバランスさせるところに在庫ポイントを置くことがサプライチェーンのマクロ構造設計といえます。

ERPとSCM、VBMとSCM0

 ERPフォーラムの梅澤伊憲氏によれば、ERPとERPパッケージは区別されるべきであるし、本当の意味での企業全体の経営資源の管理はERPというよりERM (Enterprise Resource Management)という概念で扱うべきとのことです。梅澤氏の分類によれば、ERPは本来、人事やオペレーションまで含まず、経営資源の計画的配分の機能を対象とするべきであるとのことです。梅澤氏は、さらに、ERPパッケージは会計システムを基盤にしているものが多く、企業活動の計画系の機能が弱い場合が多い、と指摘しています。

 また、マッキンゼー&カンパニーの名和高司氏によれば、SCMはVBM(Value Based Management)の一コンポーネントであるとのことです。名和氏によればVBMはValueが選択され作りこまれ伝達される3つのプロセスよりなり、SCMはValueの作り込み部分の中核をなすとのことです。

VBMにおけるSCMの位置づけ

 VBMの視点で見たとき、売上を伸ばすのはChoice ValueやCommunicate Valueの領域で主に行われることで、SCM自体はMake Valueの効率化に専念するものだと考えられます。もちろん、SCMの優秀さが顧客を引きつける源泉にもなりますが、売上の伸長を支えるのはやなり、SCM以外のManagementのメインタスクではないでしょうか?

 Demand ChainでなくSupply Chainであるわけ0

 サプライチェーンマネジメントがブームになっています。ここでは、サプライチェーンという供給者視点の命名を擁護する論旨を提示させていただきます。

 「サプライチェーンでは、メーカーからの押しつけのようで感じがよくない、少し変だが本来はデマンドチェーンであるべきだ」というくだりをよく耳にします。たしかに、ビジネスを考えるとき、お客様のニーズを出発点にしないと様々なひずみが出てくるものです。

 ところが、供給者からの押しつけが、消費者の側からみてありがたい場合があるのです。たとえば、アメリカで航空券を買う場合、空席の多い便のチケットは格安で入手できます。反対に込み合う便のチケットは安くなりません。これは、市場原理からすると全く当たり前のことです。しかし、こうなっていない関係がたくさんあります。サプライチェーン上での典型的な関係でみると、月末の込み合うときに納期を指定されるのと、月中の忙しくない時に納期を指定されるのとでは価格に差があるはずだということです。あるいは、短納期の注文は、十分な期間をもらっている注文より、同じ内容の注文でも価格が高くて当然なのではないかということになります。

 供給者サイドからすると、注文が平準化されているに越したことはありません。注文が平準化されていれば、より効率的に製品/サービスを提供でき、価格を下げることが出来ます。消費者のサイドから見ても、少し時期をずらすことで安く買うことが出来るのならば、その方がいいという場合は相当あります。

仮説0製品やサービスの価格には、時間の尺度も入るべきである。

SCPとSCE0

 予測があたらないという計画系での限界の他に、計画どおりには供給できないと言うオペレーション側における限界もあります。これはSCP(Supply Chain Planning)とSCE(Supply Chain Execution)にSCMを分けて考えると整理しやすい問題構造といえます。

 生産や配送では必ず、遅れや間違いが発生します。SCEで起こる混乱はある程度不可避であるといえます。SCPで解決できる問題は元々Supply Chain上のすべての問題ではないわけです。

IPR(Industry Process Reengineering) 0

 Industry Process Reengineeringには2つの意味あいがあります。

 1つは、サプライチェーンといっても実際は1本の鎖ではなく、いくつかのチェーンが交差した複雑な構造になっているという点です。具体的には、Competitorsである製造メーカーであっても、同じ物流業者を使うことがベストプラクティクスである場合もあるし、さらに小売りでみれば、競合製品であっても同じ店で売られることがしばしばであります。こういう状況では、自社にとってのBPRを行うことが、他社のビジネスプロセスの強化につながってしまうという状況が生じます。自社だけのBPRでは効果がでず、Industry全体としてのビジネスプロセスリエンジニアリングが必要になるというわけです。

 もう1つは、企業同士でBPRを行っても、たとえ大手といえども、大手以外の企業とも取引があり、BPRできたところとできていないところが混ざりあい、余計に手間がかかってしまうということが起こるという視点です。たとえば、あるメーカーが大手のスーパーと需給計画を連動させるBPRをおこなったとしても、大手のスーパー以外は追随できず、以前のやり方とBPRしたやり方とが混在してしまうという状況が起こるわけです。実際に効果のでるBPRをやろうとしたら、業界全体でやっていかないと効果がでないということです。

BPR,ERP,SCM0

 SCMのムーヴメントと以前のムーヴメントの違いはなんでしょうか?

 BPRが手法、ERPが業務ソフトウエアにフォーカスしていたのにつづいて、SCMはより経営的価値について掘り下げているムーブメントだといえます。エリー・ゴールドラッドの「ゴール」がベストセラーになったことや、ECインフラの拡大、パソコン関連ビジネスでの取り組み事例などと相まって、BPR、ERPのムーヴメントで蓄積してきた、「ITを活用した経営改革手法」の一つの集大成がSCMのムーヴメントになっていると考えます。

Key Business Modules0

 業種ごとに、最も重要になる業務(key Business Modules)は異なります。その部分を重点的に強化する戦略は大変有効です。

たとえば、通信業界においては、売掛/債権/請求管理が大変であり、この部分と顧客管理を関連づけた、Billing & Customer CareがA Key Business Moduleといえます。また、部品点数が多いプリント基板のアセンブリをやっている企業にとっては、Engineering PurchaseがA Key Business Moduleといえます。最近流行のボトルネックの視点で見れば、ビジネスプロセス上のボトルネックがKey Business Modulesといえます。

予測精度の向上0

 予測の手法を変えることで期待できる精度の向上はあまり大きくありません。平滑方や季節変動にバイアスをかけた方法など、過去のデータから、パターンを導き出す手法は、かなりの数が知られています。しかし、過去のデータが、将来にわたっても通用するとは限りません。また、昨今の商品のライフサイクルの短さを考えると、過去のデータから導き出したパターンは当たらないと考えた方が良いのではないでしょうか?できるだけ最新の情報を使って予測を行わなくては精度の向上は望めないと考えます。

予測の精度を向上するためには、以下の条件が必要になると考えます。

  • 刻々と新しい情報(受注や引き合いなど)が入ってくること
  • その新しい情報を使って計画を再立案すること
  • 再立案した計画を供給側に伝えること

 このうち、一番難しいのが、「刻々と新しい情報が入ってくること」です。自社でSales Forceを持っている場合でさえ、営業サイドからは供給サイドへ現在進行形の引き合い、受注情報はなかなか伝わってきません。卸や、小売り、代理店を通す場合はなおさら情報が伝わりにくくなります。

 確定した受注だけでなく、できる限り生の市場に近い情報を活用することなしには、予測の精度は、なかなか向上しないでしょう。

 また、電子部品などの場合、元々、セットメーカー自体が製品販売予測が当たらずに、在庫や欠品を発生させてしまっています。その構成部品を納める電子部の場合、何を信じて供給計画を立てればいいのかわからないというところではないでしょうか。

Marginal Profits0

 間接費の配賦は、業績評価を惑わせるやっかいな仕組みです。伝統的な管理会計の世界でも、限界利益(Marginal Profits)という概念で間接費分の多寡を除いた利益貢献度による評価を提示してきました。また、最近では直接費のなかの直接材料費だけに注目してスループットという概念も注目されています。スループット方式では、販売以前の棚卸資産はすべて、直接材料費分だけで価値を設定します。会社全体で見た場合、労務費(人件費)は限りなく固定費に近い経費ですので、材料費だけを変動費とみる手法も一考に値する管理方式といえます。(人件費を固定費とみるのは、作業が効率化されても、社員の場合解雇はなかなかできないからです)

 これは、販売見込みがなくてもたくさん作ることで見かけ上、単位あたりの製造原価をさげて売上原価を減らしてしまう全部原価計算の問題を解決しようとするアプローチといえます(概念としては明快なのですが、あまりに一般の原価計算方式と違うため、管理会計とはいえ導入はなかなかすすまないようです)。

 全部原価方式、限界利益方式、スループット方式を整理すると以下のようになります。

全部原価方式
売上純利益=売上-(販売数量x棚卸し製品製造単価)
*製品製造単価は棚卸し在庫が増えると低くなるので見かけ上在庫の増加が売上純利益の増加につながってしまう。

限界利益方式
限界利益=売上-直接材料費-直接労務費
*直接労務費の算出は煩雑である

スループット方式
スループット=売上―直接材料費

戦略的SCM0

 サプライチェーンといっても非常に範囲が広く、業種業態によっても異なっています。サプライチェーン全体での情報の共有を一気に実現することは難しく、理想のSCMを実現することはほとんど不可能です。

 忘れてはならないのは、競合他社の動向です。トータルで見て、競合他社より良い経営パフォーマンスであれば良いわけです。競合他社との相対的関係でみて、より多くの収益がでるSCMであればよいわけです。

 また、SCMのパフォーマンスが競合他社と比べて遜色ない場合、SCM以外での問題、たとえばマーケティング上の問題を検討する必要があるといえます。

ボトルネック方式の限界0

 エリー・ゴールドラッド氏のボトルネックの考え方は大変明快ですが、実現には?がつきます。製造ラインが1本しかないのならば、ボトルネックに着目するのも簡単なのですが、実際には、工程は、設備、人を様々に組み合わせて稼働しているので、どこかに明確なボトルネックが定常的に存在しているというのはまれなケースです(そういう場合は、そのボトルネックを基準に考えればよいのですが)。また、工程では、トラブルが付き物でボトルネック自体が変動してしまいます。さらに、他品種を、工程を組み合わせて製造している場合、ボトルネックが製品ごとにいろいろなところで発生することが考えられます。これらにいちいち対応するのはなかなか大変なことです。基本的には、工程やハンドリングのリードタイムを短くしてJITのスタイルに近づけていくのが最善策と考えます。

JITの限界と'98SCMブーム0

 在庫を減らすという視点では、JITは大変大変優れた方法論です。しかし、JITの典型的業界である自動車産業のように納車まで2ヶ月近くかかってもよいビジネスは他にはなかなか見つかりません。短い納期と在庫の最小化を実現しようとするのが'98型SCMの目指しているところではないでしょうか?その場合、どうしても予測による作り置きが必要となります。この予測の精度向上が'98SCMのキーになる点と考えます。